閉店後の静かな店内。
昼間の暑さが少しだけ残る夜でした。
棚に並ぶ瓶をゆっくり眺めながら、まるさんは小さくつぶやきます。
「そろそろ、この一本をお客さんと分かち合う季節ですね」
そう言って、手に取ったのは、檸檬色のお酒でした。
今夜のお酒は、平和酒造「鶴梅 檸檬」。
東京駅のテイスティングBARでの出会いから、購入までのお話です。
☕ 今夜のご案内
・鶴梅 檸檬はどんなお酒? ― 平和酒造の歴史と味わいの理由
・上品な酸味の奥にある、果実そのものの深いコク
・料理に合わせた、飲み方のいろいろ
どうぞ、ごゆっくり。
はせがわ酒店で、二本と出会った日
東京駅構内の「はせがわ酒店」。
テイスティングBARが併設されていて、日本酒・焼酎・ビールなど店舗で販売しているお酒を実際に飲んで検討することができます。
この日のラインナップの中から、檸檬という文字に惹かれて、「鶴梅 檸檬」をロックで一杯、お願いしました。
曇りガラスのような瓶に、「れもん」と書かれた白いラベル。淡い檸檬色のお酒に、思わず期待が高まります。
グラスを口に運んだ瞬間、思わず表情が変わりました。
思っていたよりずっと滑らかな口当たり。酸味は上品で、それでいて、果実をまるごとかじったような、しっかりとしたコクが奥にあります。
「これは、美味しい。」
そのまま、購入するために売り場へと向かいました。
商品を手に取り、四合瓶にしようか、一升瓶にしようか。迷いながら棚の前に立っていると、店員さんが、声をかけてくれました。
テイスティングBARでロックをいただいたこと、美味しかったので買って帰ろうと思っていることをお伝えすると――
「アルコールは7%と低めなんですが、夏場はソーダで割って飲むのもおすすめですよ。」
そんな飲み方を教えてもらいました。
結局、一升瓶を手に、レジへ向かいます。
その途中、棚の中に、ふと麦焼酎の「兼八」を見つけました。
思いがけない再会のようで、胸の奥が少しだけ弾みます。
檸檬のお酒に出会えただけでも十分嬉しかったのに、もう一本、心が動くお酒が待っていたのです。
私はそっと四合瓶を手に取り、その日は二本のお酒を抱えて店をあとにしました。
鶴梅 檸檬とは
さて、私が驚いたあの味わい。少しだけ、その正体をお話しします。
正直に言えば、あの日の私は、平和酒造のことも、「鶴梅」というブランドのことも、ほとんど知りませんでした。
ただ、檸檬のお酒に惹かれたのです。
もともと柑橘系のお酒が好きで、気になった一本は、まず飲んでみたくなる。気になっていたり、誰かに勧められたり、そんな小さなきっかけで手に取ることが多いのです。
そして、あとから造り手のことを調べます。
どんな蔵なのか。どんな思いで造られているのか。知れば知るほど、不思議とその一本に愛着が湧いてきます。
「これは、誰かと分かち合いたくなるな。」
私にとって、お酒との出会いは、いつもそんな順番です。
平和酒造という蔵
鶴梅は、和歌山県海南市の平和酒造が手がけるブランドです。
あとから調べてみると、平和酒造は日本酒「紀土 KID」の蔵元として知られる蔵でした。
創業は1928年。戦時中には酒造りを休まざるを得ない時期もあったそうです。それでも再び酒造りを始めたとき、「平和な時代に酒を造りたい」という願いを込め、「平和酒造」という名を掲げたのだと知りました。
そんな日本酒の蔵から生まれたのが、「鶴梅」シリーズです。完熟梅酒から始まり、ゆず、夏みかん、そして檸檬へと広がっていきました。
檸檬の味わい
鶴梅 檸檬には、契約栽培による国産檸檬の天然果汁が使われ、日本酒をベースに仕立てられています。
グラスに注ぐと、鮮やかな檸檬色。香りはみずみずしく、それでいてどこか奥行きがあります。
口に含んだ瞬間は、果実の甘み。
やがて檸檬の皮を思わせるほろ苦さが顔を出し、最後は爽やかな酸味が静かに余韻を残します。
ひと口の中で、檸檬そのものを味わっているような、不思議な奥行きがありました。
私が感じた「果実をまるごとかじったようなコク」も、この調和から生まれているのかもしれません。
なお、鶴梅 檸檬は例年2月から6月ごろに出回る季節限定商品なのだそうです。
通年で出会えるお酒ではないからこそ、店頭で見かけたときは、なんだか嬉しい巡り合わせのように感じます。
そして私は、その春に出会った一本を、夏までそっと取っておきました。
昼間の暑さが残る夜に開けたくなる――そんな気がしていたのです。
檸檬の表情を楽しむなら
あの日、店員さんに教えてもらったソーダ割り。
それ以来、私は料理やその日の気分に合わせて、この一本の楽しみ方を少し変えています。
お酒をじっくり味わいたい夜は、よく冷やしてストレートで。
または、氷を浮かべたロックで。
檸檬の風味をしっかりと感じられる、濃厚な味わいです。
甘さの奥には、皮由来のほろ苦さが静かに広がります。
一方で、味の濃い料理や油の多い料理と合わせるときは、ソーダ割りでいただくことが多いです。
口の中をさっぱりと整えて、また次のひと口へ向かわせてくれます。
同じ一本でも、飲み方ひとつで、ずいぶん違う表情を見せてくれるお酒です。
こんな方へ
- 平和酒造の日本酒だけでなく、梅酒やリキュールにも興味がある方に
- 上品な酸味と、果実そのものが持つ深いコクを楽しみたい方に
- 中華や揚げ物、焼肉など、味のしっかりした料理に合わせる一本を探している方に
知っておきたいこと
- 季節限定の商品です。通年では購入できないので、出会えたときのお楽しみとして、気に留めておいていただけたら。
- 720mlと1800mlのサイズ展開があります。
- 甘い柑橘リキュールを想像していると、酸味のしっかりした、大人の味わいに少し驚かれるかもしれません。
- 果実由来の成分が沈殿したり、浮遊したりすることがありますが、品質には問題ありません。
- 開封後は冷蔵庫で保存し、なるべく早めに楽しむのがおすすめです。

ただ甘いだけではないんです。檸檬の皮を思わせるほろ苦さが、最後に静かに残るところが好きなんですよ。
鶴梅 檸檬と出会うには
季節限定の商品です。実店舗でふと出会う嬉しいご縁を楽しみにしながら、遠方の方は取扱店のオンラインショップをのぞいてみるのもよいかもしれません。
オンラインショップ
平和酒造は直営の通信販売を行っていないそうです。取扱いのある酒販店のオンラインサイトを利用するのがよさそうです。
実店舗
はせがわ酒店 東京グランスタ店をはじめ、日本酒・地酒を扱う酒販店で見かけることがあります。
季節限定商品のため、店舗によって取り扱い時期や在庫が異なります。確実に手に入れたい場合は、事前に店舗へ確認すると安心です。
価格の目安:720mlで2,112円、1800mlで3,520円(税込)。
まるさんの覚書
- 平和酒造は、日本酒「紀土 KID」でも知られる蔵元。梅酒「鶴梅」、柑橘リキュールの檸檬と、幅広く手がけている。
- 鶴梅 檸檬は、口当たり滑らかで上品な酸味と、果実そのもののコクが調和したリキュール。契約栽培の国産檸檬を使用。
- 檸檬の奥行きを感じるなら、まずはストレートがおすすめです。私は、じっくり味わいたい夜はストレートやロックで、味の濃い料理に合わせるときはソーダ割りで楽しんでいます。
- 中華・揚げ物・焼肉など、脂の多い料理との相性がいい。
- 例年2月〜6月ごろの季節限定商品。通年では手に入らないので、巡り合えたなら、それだけで嬉しい一本。

そういえば、あの日は二本のお酒と出会ったんですね。

テイスティングBARで味わった一杯と、棚で見つけた一本。……同じ日に、違う形で出会ったところが素敵です。

ふふ。お酒との出会いって、不思議ですよね。探していたわけではなくても、心に残る一本に巡り合うことがありますから。

だから、誰かと分かち合いたくなるんですね。

ええ。きっと、そういう一本との出会いがあるから、お酒は面白いんだと思います。
ライト君とゆきちゃんを見送り、店の扉が静かに閉まる。
さっきまで聞こえていた二人の声が遠ざかると、店内には、いつもの閉店後の静けさが戻ってきました。
カウンターには、飲み終えたグラスが三つ。
檸檬の香りが、まだ少しだけ残っているような気がします。
黒板に書いた「本日のお酒」の文字を、そっと消しながら、私は思います。
次に出会う一本も、きっとまた、誰かにそっと話したくなるのでしょう。
あとがき
テイスティングBARでの一杯と、棚のふとした発見。出会い方の違う二本が、同じ日、同じ店からやってきました。
そんな小さな偶然の重なりも、お酒を選ぶ楽しみのひとつなのかもしれません。
今夜のお話は、このあたりで。
また、ゆっくりお茶でも――それとも、お酒でも飲みにいらしてくださいね。


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