新幹線に乗ったときだけ食べられる、特別なアイスがありました。「シンカンセンスゴイカタイアイス」です。
子どもの頃、普段家で食べていたのは、チュッチュや箱アイス。少し特別な日には、レディーボーデン。同じバニラアイスでも、新幹線のアイスは別格でした。旅の始まりを告げる、小さな合図のようなものだったのです。
この記事では、「シンカンセンスゴイカタイアイス」という愛称の由来や、なぜあんなに硬いのか、美味しい食べ方をご紹介します。そして、スプーンがなかなか入らず、アイスと格闘していた子どもの頃の思い出も、少しだけ綴ってみようと思います。
今夜のおやつは、「シンカンセンスゴイカタイアイス」。
帰省のたびに待ちわびた、あの硬いアイスのお話です。
☕ この案内帖でわかること
- 「シンカンセンスゴイカタイアイス」って、どんなアイス?(名前の由来)
- なぜあんなに硬いの?
- 今はどこで買える?
どうぞ、お好きな飲みものを片手に。
今夜は、いつもより深煎りのコーヒーをいれて、ゆっくりお付き合いください。
窓の外では、遠くで蝉の声が鳴いています。夜になっても、まだ夏の熱気が残る一日でした。
閉店後の「喫茶と酒処 まるさん」。片づけもひと段落して、三人だけのお茶の時間が静かに始まります。
冷凍庫から取り出されたのは、深い紺色のパッケージ。金色の縁取りと小さな星が、落ち着いた光をまとっています。
派手さはないのに、なぜか目を引く——そんな佇まいでした。

今夜のお菓子は、これです。『シンカンセンスゴイカタイアイス』。……この前、常連さんが持ってきてくれましてね。

新幹線の、あの有名なアイスですか? 名前は知ってますけど、食べたことはないです。

私もです。……名前が、すごいことになってますね。

ふふ、この名前にはちゃんと理由がありましてね。私にとっては、子どもの頃から特別なアイスなんですよ。

特別、というと?

帰省のたびに、新幹線へ乗る楽しみのひとつでした。車内販売のお姉さんが来るのを、まだかな、まだかなって待っていたものです。

アイスを楽しみに、新幹線に乗っていたんですね。

ええ。……食べるたびに、あの頃の景色まで思い出します。
帰省の合図は、いつもこの硬さから
子どものころ、新幹線に乗る日は特別な日でした。帰省のときだけ乗る、あの2時間半ほどの旅。
席につくと、そわそわしながら車内販売のワゴンを待ちます。紺色の気品あるパッケージ。手渡されたそれは、指先が冷たくなるほど、しっかり冷えていました。
はやる気持ちを抑えながら、プラスチック製のスプーンを差し込んでみる。
……びくともしません。
待ちきれなくて、手のひらでそっと包んでみたり、表面だけをなんとかこそいで、味見するようにぺろっといただいたり。子どもなりに、あの手この手で格闘していました。
少し黄みがかった、あの色。当時の私は、卵の入ったミルクセーキのようなものなのかな、と思っていました。
けれど、あの他を寄せ付けない濃厚さの正体は、生クリームだったのです。
ゆっくりゆっくり、柔らかくなっていくアイスを、少しずつ大切に食べ進める。
そのペースは、そのまま旅の進み具合と重なっていました。
食べ終える頃には、窓の外の景色も、少しずつ見慣れたものへ変わっていました。
あのアイスは、帰省の時間そのものを一緒に運んでくれていたのかもしれません。
「シンカンセンスゴイカタイアイス」とは?
新幹線の旅のお供として、すっかりおなじみになったこのアイス。
けれど、「シンカンセンスゴイカタイアイス」という名前は、実は正式名称ではありません。
正式名称は、「スジャータ スーパープレミアムアイスクリーム」。
製造しているのは、スジャータめいらくグループです。
そのあまりの硬さから、いつしかSNSを中心に「シンカンセンスゴイカタイアイス」という愛称で呼ばれるようになりました。
お客さんたちが付けた愛称が広まり、今では多くの人に親しまれる名前になっているというのも、なんだか愉快な話です。
では、なぜそこまで硬いのでしょうか。
理由のひとつは、一般的なアイスクリームより空気の含有量を抑え、乳脂肪分を高めていることです。
一般的に乳脂肪分8%以上のものを「アイスクリーム」と呼びますが、このバニラ味は15.5%。その中でも特に濃厚な部類に入ります。
さらに、車内販売では品質を保つためにドライアイスでしっかり冷やされていたため、あの独特の硬さが生まれていたのだそうです。
スプーンを入れようとしても、なかなか歯が立たない。
大人でも手を焼くその硬さに、子どもの力ではなおさら太刀打ちできません。
それでも、みんなあの硬さを、どこか楽しみにしているのです。
あの日の味に、もう一度出会う

大人になってからは、新幹線に乗る機会もめっきり減りました。それでも、夏がくると、あの車内販売でしか出会えなかった特別なアイスを思い出すのです。
先日、特急あずさの車内でいただく機会がありました。
窓の外に流れていく景色を眺めながら、少し時間を置いてからスプーンを入れる。あの硬かったアイスが、ゆっくりと表情を変えていく時間も、このアイスの楽しみのひとつなのかもしれません。
舌の上に乗せた瞬間、ふわりと広がるバニラの香り。そして追いかけるように感じるのは、生クリームをたっぷり使った、深く濃厚なミルキーさです。
最初はカチカチだったアイスが、少しずつ溶けていくにつれて、驚くほどなめらかな口当たりへ変わっていく。
ひと口ごとに、バニラの香りとクリームのコクがゆっくりと広がっていく。まるで、時間まで一緒に溶けていくようです。
濃密な味わいが体温でほどけ、口の中に長い余韻を残してくれる。
子どもの頃は、ただ「おいしい」と感じていたあの味。大人になった今だからこそ、そのおいしさの理由まで少しだけ分かるようになりました。
パッケージを見ると、そこには「北海道産生クリーム使用」の文字。
あの特別感の正体は、これだったのか——そう、そっと教えてもらったような気がしました。
こんなときに、思い出してほしい
- 濃厚でミルキーなバニラアイスを味わいたいとき
- 少し時間をかけて、おいしさを待つ時間も楽しみたいとき
- 昔の新幹線の旅を、ふと思い出したくなったとき
知っておきたいこと
- そのままでは非常に硬く、スプーンが刺さらないこともあります
- 数分待つ、少しずつ削るなど、食べ方に少し工夫が要ります

ご家庭の冷凍庫では、車内販売の頃のような硬さには、なかなかならないようですね。もし、あの『スプーンが入らない』体験も味わいたいなら、届いたらなるべく早めにいただくのがよさそうです。あの硬さも、このアイスならではの楽しみだったのだと思います。
購入方法
最近になって、新幹線に乗らなくても、この味をお取り寄せできることを知りました。
しかも、フレーバーはバニラだけではないようです。
▶ シンカンセンスゴイカタイアイスのお取り寄せはこちら(PLUSTA ONLINE STORE・楽天市場店)
あの頃を思い出しながら、ゆっくり味わう。
そんな楽しみ方も、悪くないと思います。
購入前に知っておきたいこと
東北・山形・秋田・上越・北陸新幹線の一部列車では、現在も車内ワゴン販売が行われています。特急あずさ・ひたちでも販売中です。
一方、東海道・山陽・九州新幹線では車内ワゴン販売が終了しているため、駅ホームの自動販売機や売店、または公式オンラインショップで購入するのがおすすめです。
※販売状況は変更されることがあります。最新情報は公式サイトをご確認ください。

わざわざ新幹線に乗らなくても、味わえる時代になりました。……でも、あの窓の外を眺めながら待った時間だけは、簡単には運べないものですね。
まるさんの覚書
- 硬さの理由は、空気を抑えた濃厚な配合と、徹底した冷却
- 「シンカンセンスゴイカタイアイス」は、お客さんが付けた愛称が広まった、珍しい生い立ち
- 生クリームの濃厚さが、正体
- 待つ時間も含めて、旅の思い出になる

今度、新幹線に乗るときは絶対食べます。

待つのも込みで楽しむんですね……なんだか、いいですね。

ふふ。気に入っていただけたようで、何よりです。
カウンターには、空になったカップと、すっかり溶けてしまった最後のひとさじ。
あの日の旅を思い出すたびに、この味も、きっと一緒によみがえるのでしょう。
味には、そんなふうに、記憶を連れてくる力があるのかもしれません。
あとがき
新幹線に乗る機会は、あの頃よりずいぶん減りました。
それでも、あのアイスのことを思い出すと、少しだけ旅心がくすぐられます。
最初のひと口までの時間も、車内販売のお姉さんを待っていた時間も、あのアイスのおいしさを、少し特別なものにしてくれていたのかもしれません。
シンカンセンスゴイカタイアイスは、濃厚な味わいはもちろん、旅の時間まで思い出させてくれる一品でした。
もし機会があれば、ぜひ一度味わってみてください。
今夜のお話は、このあたりで。
また、ゆっくりお茶でも飲みにいらしてくださいね。

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